気持ちの整理

バイトが終わってからノブさんの家に行った。
いつもよりノブさんの帰りが遅い。仕事が長引いてるのか会社で飲みに行ってるのか・・・仕事だとしたら何か嫌な予感がするなぁと思ってたら、10時半頃に帰ってきた。酔ってた。ちょっと安心。
ノブさんは酔うと変なテンションになるんだけど、今日は大人しかった。帰ってくるなり「さえこ愛してるよ」って言って抱きしめてくれた。昼間、私が感傷的なメールを送ったせいかな、って思った。
私は一応ノブさんとご飯を食べるつもりだったのでお腹ぺこぺこ。ノブさんは食べてきちゃってたから一人でカップラーメンを作った。ノブさんは私の横に座って何度も私を抱きしめてくれる。
今日は何だかすごく寂しい一日だった。一人でいると、ノブさんのことが頭に浮かんで、寂しくなって・・・だからそんな風にされると嬉しくてちょっと泣いてしまった。そしたらノブさんも涙目になってた。どうしたんだろう。
ラーメンを食べ終わってから一緒にお風呂に入った。2人で体を洗ったりしてると、突然ノブさんが
「9月から転勤になった」
って言った。
一瞬息を飲んだ。何も言えなかった。まさか本当に・・・
ノブさんがまた私を抱きしめた。思わず涙が出てきた、と思ったら、ノブさんも泣いていた。泣きながら「ごめん」って言われた。
「ノブさんが謝る必要ないよ」って私は言った。それくらいしか言う言葉が思いつかなかった。


お風呂の中でも、布団に入ってからも、ノブさんはずっとずっと「さえこ愛してるよ」って言い続けてくれた。
出会ってから、5ヶ月が過ぎた。まだ半年にもなってない。今まで一緒にしてきたことが頭に浮かぶ。
初めて会った日からずっと、ほぼ毎日、私はノブさんのこの家にいた。一緒に暮らしたこの部屋に、あともう1ヵ月半しかいられないんだと思うと悲しかった。ノブさんが仕事でいない時でも、この部屋にいるとノブさんと一緒にいるような気がしてた。
大阪のいろんな場所へ行った。これからまだまだ他にも行きたいところはあるのに・・・
毎晩、となりにノブさんがいないと思うと、寂しくて悲しくて耐えられそうにない。
ノブさんのいない毎日をどんな風に過ごせばいいのか分からない。



ノブさんは「正直、仕事をやめようかどうかまで、迷ってる」って言った。東京に行くか、仕事をやめるか。私が「やめちゃダメだ。やり始めたことはちゃんとやり通さなきゃ」って言うと、「さえこならそう言いそうだなって思った」って言われた。
とにかく私は、東大の大学院に行くことに決めた。
私が決めたって東大が入れてくれなきゃどうしようもないんだけど、でもとにかく頑張らないと。


先は見えないけど、私はノブさんとずっと一緒にいたい。だから頑張りたい。すべてがうまくいくって信じたい。