すてきにうまい

アメリカ文学の授業でヘミングウェイを読んでる。
前に読んだ短編の中に、キャンプでご飯を作るシーンが出てきたんだけど、信じられないくらいおいしい描写なのでここに転載してみる。
 
主人公はニック・アダムズ。ふらふら旅をしていると、野宿している二人の男に出会う。
一人は昔有名だった元懸賞拳闘家(賭け事の戦いに出る選手で、勝てばお金をもらえる)で今は落ちぶれたアド・フランシス、もう一人はアドと旅の途中で知り合った黒人のバッグズ。

黒人は、フライパンに薄切りのハムを並べた。フライパンが熱くなるにつれて、油がぶつぶつ噴出た。バッグズは、黒い、長い脚をまげて火の方へ屈みこみ、ハムを裏返すと、卵を割ってフライパンに落し、熱い脂が卵にしみるようにフライパンを左右に傾けた。
「その袋のパンを切ってくれねえか、アダムズさん?」と、バッグズがふり向いていった。
「よしきた」
ニックは袋に手をのばし、パンをとった。六きれに切った。(中略)
「パンを渡してくれませんか、アダムズさん?」とバッグズがたずねた。ニックは渡した。
「パンをハムの脂につけるの好きかね?」と黒人がたずねた。
「大好きだよ!」
「あとにした方がいいな。いちばん終りにやった方がいい。さあできた」
黒人はハムを一枚つまんでひときれのパンにのせ、その上に卵を一個、するりと置いた。
「それをサンドイッチにしてフランシスさんに渡してくれねえか」
アドはサンドイッチをとると、食べ始めた。
「卵をこぼさねえよう、気をつけるんだよ」と黒人は注意した。「これはあんたのだ、アダムズさん。あとはおれのだ」
ニックはサンドイッチをぱくついた。黒人は向い側のアドの横に腰を下ろしていた。あたらしい油いためのハムと卵はすてきにうまかった。
「アダムズさんは、ほんとにぺこぺこなんだな」と黒人はいった。(略)
「熱いハムの脂にひたしたパンはどうだね?」とバッグズがいった。
「どうもありがとう」

はぁ。
たっぷりの油でいためたハムと卵をサンドイッチに・・・光景を想像するだけでよだれが出ます。めっちゃおいしそうやんけ。