鈴木亜美アルバム「CONNETA」全曲レビュー

大変ご無沙汰しています。さえこです。


日記やめる!と宣言しておいて何なんだけど、鈴木亜美が3月にNEWアルバム「CONNETA(コネッタ)」を発売して、これがあまりにも素晴らしい出来だったので、レビューしないわけにはいかない!と強く思い、こうして再び筆をとりました。
mixiで感想を書いても、どうせあそこは閉鎖的な空間だし、あんまり意味がないと思って。ファンである以上、開かれたネット世界で鈴木亜美の事を訴えていくのもある意味義務というか、務めであろう!と。

まぁそんな感じで久し振りですが痛さは相変わらずのさえこです。レビュー行きます。




まずこのアルバムはコンセプトが凄い。鈴木亜美と各種アーティスト・クリエイターが「join」して、全く新しい鈴木亜美の切り口を見せよう、というもの。その参加アーティスト達が「え、何でこの人達?」という顔ぶればかりで、例えばカジヒデキTHC!!SCOOBIE DONORTHERN BRIGHTキリンジBuffalo Daughterつじあやの・・・という、何だかもうとにかく誰も想像がつかなかったようなすごい面々である。
今回の「join」企画を持ち込まれたこれらのアーティスト側からしても当然同じように「え、何で俺達が鈴木亜美とのコラボを依頼されたの?」みたいな状態になったことは想像に難くない訳で、さらに同じく依頼を受けたその他のメンツのリストを見て「え、この人たちもやるの?どういう組み合わせ??」と、何よりもまず頭の中はハテナマークが飛び交っていたに違いない。
そんな中で彼らがたどり着く結論として想像できるのは、
「多分鈴木亜美サイドは、今までの鈴木あみ像/鈴木亜美像とは全く違う新しい方向性への挑戦を試みているんだ。俺達は、従来の鈴木亜美のイメージを踏襲して曲作りをする事を求められているわけではなく、それぞれの立場からの新鮮な「鈴木亜美」を自由に表現する事を期待されているんだ」
という感じのものだと思う。

そして逆に鈴木亜美自身の立場から見た場合、やはりこちらも、従来のイメージにとらわれない全く新しい挑戦をしようとしていることが分かる。
2006年夏の「Alright!」「Like a Love?」のリリース後、「自分の歌いたいものが何なのか分からなくなった。歌いたいという気持ちは確かなのに、伝えるべき物が何かを見失ってしまった」というこの当時の彼女には時期を同じくして女優としての仕事がスタートし始め、「自分ではない人間」を自分の中に入り込ませる「演技」というものに新しい可能性を見出したと言っている。
そしてそこから、「自分から他者の中に入り込んでいくことで他者と繋がり、共感する⇒表現する」という手法を音楽活動にも応用してみたのが今回の「CONNETTA」なのだ。


そんなわけでこのアルバムは、何だかとても凄い。
普段は「鈴木亜美?はいはい、あの大衆に迎合した低レベルJポップでしょ」とばかりにスカしてる人種には、キリンジの「それもきっとしあわせ」を聞かせてやりたい。
「うわ、これ誰歌ってるの?新人?」
なんて色めき立ってるところへ「実は鈴木亜美なんだよ」って教えてやったら、どんな顔をするだろうと思うとワクワクしますよ。



言いたい事が何一つまとまらないので、全く概略を掴めなかった人のためにひとまず記事を引用しておきます。
アーティストスペシャル 鈴木亜美 インタビュー/音楽情報サイト:hotexpress




さて、前置きが長くなりすぎましたが曲感想いっときます。

スウェーデン滞在中のカジヒデキが、鈴木亜美とは一度も会わずに作り上げた曲。
とにかく突き抜け感が秀逸。
キッチュでシュールな歌詞、アップダウンに富んだメロディ、ひたすらキラキラなアレンジ、どれを取っても、アイドル的バタ臭さとスウェディッシュポップなオシャレ感が絶妙なバランスで保たれてます。
このアルバムの中では一番「アイドル・鈴木あみ」のイメージを濃く引きずっているとは思うけど、それは多分カジさんが敢えて意図したところで、アイドル・鈴木あみの最大の美徳である「元気ハツラツ」をカジさん的好みで解釈し直した感じで、好感度かなり高いです。
PVはぜひともアリス風エプロンドレスを着た亜美ちゃんにCGのお花畑とか森とかを駆け回って欲しいですね。昔みたいな可愛らしい幼いイメージで。

  • 02.Alright!  AMI SUZUKI joins HλL

Alright!(DVD付)

Alright!(DVD付)

既発シングルより。
1曲目のテンションとはまた違うアッパーな元気ソング。
このアルバムは全体的に曲間の繋がりが非常にちぐはぐですが、それがまた全体を通して聞くと「全体的にちぐはぐ」という統一感を感じるという不思議な構成。
とは言ってもやっぱり既発シングルは全体的に存在が浮いてますが・・・
原点回帰的に、底抜けに明るい夏元気系で攻めたシングルで、異様なほどにメロディから浮いていて、異様なほどに存在を主張する歌詞がまた「これぞ鈴木亜美だな」と思わせてくれて、ニヤっとしちゃいます。(そんな風に受け止めてるのは私だけかも知れんけど・・・)
素直にキャッチーで聞きやすく、歌いやすい、カラオケ向きの曲。

  • 03.Peaceお届け!!  AMI SUZUKI joins THC!!

音楽に関してはちょっとした権威(笑)の彼氏さんをして「コレはいい歌だね」と言わしめたシングル。
分かりやすく掴みのいい歌詞とメロディーは素直に好感が持てるし、THC!!のメンバーとひとつになって作り上げた!って感じのバンド感が、今までソロで活動し続けてきた鈴木亜美では見られなかった良さを発見させてくれる。
ライブで異常なほどはっちゃけてくれるファンの大好きな”あの鈴木亜美”をきちんとひとつの曲として見せてくれたね。THC!!メンバーとの掛け合いも絶妙。(ところで、THC!!のラップ担当の女の人の声、かなり亜美ちゃんに似てるよね?)
ライブでやれば確実に一番盛り上がれる曲。

  • 04.Dancin' Little Woman  AMI SUZUKI joins SCOOBIE DO

曲の随所で亜美ちゃんのハジけっぷりを堪能できる、鈴木亜美新境地の一曲。
イントロのシャウト「アーォ!」に始まって、ちょっとしたフェイクや伸ばし声の処理、クセのある巻き舌などなど、歌い手としての彼女のテクニックを色々詰め込んでいて、聞き飽きない。
鈴木亜美の歌から感じる突き抜け感・爽快感って、わりとすぐ目に付く彼女の特徴だと思うんだけど、実は彼女はこの曲で見せているような小手先系テクニックでもそこそこオリジナリティと魅力を持っている。
決して「すっげぇ」「巧いなぁ」と聞き手を唸らせるようなものではないけれど、「ただ歌が上手な人」によるある、聞き流されてしまうような歌い方じゃなく、ちょっと耳に引っかかる絶妙な味を持っている。
そしてSCOOBIE DOはそんな彼女の一面を巧妙に引き出すことに、結果的に成功していると思う。
まぁ彼ら側からすれば「こんな歌、鈴木亜美が歌ったらおもしれぇだろうなー」みたいなノリで書いてる気がしますが(笑)。

シングル「Alright!」カップリング。
南国リゾートでゆったりリラクゼーションなムード満載の一曲。
鈴木あみ鈴木亜美の歌から受けるイメージとしては、これまで

復帰前「爽やか!元気!ちょっとせつない!」

復帰後「力強く、全力で心底から訴えかける!」

という流れで来ていたと思うんだけど、この曲あたりからまた新しい流れに突入した感じがします。「CONNETA」の曲はこの新しい流れを上手く活かした曲が多いけど、その流れのきっかけになった感じ。

限りなく初期浜崎あゆみっぽい曲(ハル作曲だからなぁ)。
切羽詰ったような、訴えかけてくるような歌詞とメロディが心に響く。
復帰後の鈴木亜美の流れとしては安心して聞ける曲。まぁでもこのアルバムでは浮いてるし、特に入れる必要はなかったかも。

シングル「Like a Love?」カップリングで、個人的にめちゃくちゃ好きな曲。
ネオフォークソングとでも表現したらいいのか、男の子視点のまっすぐな歌詞と古めかしく懐かしいメロディラインが叙情的で、ひとつの映画みたいな構成になっています。
鈴木亜美の新境地がこっちの方面に向かったら結構アツいなぁーと思ってたけど、どうやらそんな事はなさそう(笑)。
しかしこの歌詞も相当ぶっ飛んでますね。「To be free」みたいに、すとんと自然に流れる(ある意味ありきたりな)歌詞も書けるクセに、どうしてもこういう「浮いた」歌詞を書いちゃう亜美ちゃんのその心意気が私は好きです。

ファンの間ではなかなか評価が高いっぽい曲。
ちょっとヘタレな男の子が、それでもキッと決意するような歌の内容が、ミディアムテンポの優しい曲に乗っかって、ほっと安心できる曲に仕上がってます。
鈴木あみが今までのアルバムでやって来たミディアムバラード(「明日の私に会いにきて」とか)にイメージが近くて、そういう意味ではファンにとって「鈴木あみ」のイメージに実は一番近い曲なのではないかと思う。
歌詞は、流れも素直で内容も秀逸で、鈴木亜美らしさをしっかり感じさせてくれつつも大衆受けしやすそう。名曲ですね。

出だしからいきなり全ファンの度肝を抜いた問題作(笑)。
でも、前からメンバーの一員でしたと言われても分からないくらい、亜美の声がBuffalo Daughterの作り出すエレクトロファンクなキラキラポップスの浮遊世界にはまり込んでます。
初夏、澄み渡った広い青空の下で、少し冷たい風を感じながら、河川敷でイヤホンで聞いたりするといいんじゃないでしょうか。
曲自体のコンセプトとしては最高で、なかなか成功したと言っていいと思います。
ただひとつ文句を言うならアウトロがややダレる感じがするかな。もう少しラストをキチっと決めて欲しかったかも。

  • 10.Fantastic  AMI SUZUKI joins 原田憲

Fantastic(DVD付)

Fantastic(DVD付)

既発シングル。やっぱりファンとしては素直に「好き!」と言いたくなる曲。
力強く優しく包み込んでくれる決意の歌詞がカッコいい。付いて行きます鈴木さん!と叫びたくなります。
キャッチーなサビが究極のピコピコトランスサウンドと合わさってこの上なくアガる。ライブでこれ演られたらイントロ聴いただけで死ねます。

  • 11.Crystal  AMI SUZUKI joins 菊地一仁

既発シングル。
これぞクリスマス!の王道ソング。
これ聞くだけでクリスマス気分に浸れる!っていう曲は、どのアーティストにもひとつくらいあるといいと思います。そういう意味で非常に価値のある曲。
何気に、歌詞がデコラティブというかレトリカルというか、凝ってます。
アルバム内の一曲としてはがっつり浮いてます。

  • 12.それもきっとしあわせ   AMI SUZUKI joins キリンジ

確実に鈴木亜美史上に生き残っていくであろう稀代の名曲。
歌い手としての一人の女の子の決意を、静かに力強く歌ったバラード。
「明日、あつく、もっと、つよく」を歌っていた16歳の女の子が、18歳の「STEP」では道に迷っていたけれど、長い年月を経て、今、私はここまで歩いてきたんだ、もう迷わないよ、と静かに微笑みながら空を見上げて歌っています。

  • 13.Like a Love?   AMI SUZUKI joins 大塚 愛

Like a Love?(DVD付)

Like a Love?(DVD付)

既発シングル。大塚愛らしいストレートなラブソング。
亜美ちゃんの歌詞もそれに沿うように素直で感情を素朴に伝えています。
この曲の歌詞の浮き方も「Alright!」同様なかなか凄い。どうやらこの時期の亜美ちゃんは色々と迷い、強がってたんだなぁと、今になって思えば色々考えさせられる感じ。
可愛らしくて切なくて単純にいい曲だけど、やっぱりこの曲は大塚自身で歌った方がいいだろうなという気もする。
彼女は、彼女自身としての表現に適した曲を書く事は出来ても、「誰からしさ」を引き出すような曲は書けないんじゃないかなと。

つじあやの節全開、ぽかぽか陽だまり・ほんわか昼下がり・ネコと芝生とミルクティー、みたいな曲。亜美は徹底的に自分を眠らせてつじさん側にシンクロしていますが、そうすることで逆にくっきりと亜美らしさが際立っているのも面白い。
今までにない甘くてか弱くて可愛い声も聴きどころ。
アルバムラストを飾るのに相応しい、ほっとする優しい曲。
これを聴き終わるとまた1曲目に戻りたくなるあたり、アルバムとしても素晴らしい。


一日置いてからちょっと修正してみました。
とにかく秀作なのでぜひ皆さんご一聴を。