はてな夢日記

赤ちゃんができた。
できたどころか産まれた。


「赤ちゃんが産まれたよ」ときよぽんに見せた。
とりあえず抱っこして、あやしてみる。目がくるくるしてちょっとぽっちゃりしている。
可愛い!とか嬉しい!といった感情はそれほどなくて、ただ単に、現状を浮け入れているような落ち着いた気持ちがあった。


「そういえば母乳をあげないと」と思ってあげてみる。
おっぱいを口に持っていくと吸うけれど、少し離すと吸うのをやめるので、どの程度あげればいいのか分からない。
赤ちゃんがおっぱいから口を離す瞬間、そのたびに”私の”口の中に母乳が滲み出してきて、母乳の味が口に広がる。
「まだ吸うのが下手だから滲み出してきちゃうんだな」と、夢の中特有の見当外れな事を思っている。


ずっと抱っこしているものの、育て方が全然分からなくて、どの程度かまってやればいいのか分からない。
どうして産まれるまで何も勉強してなかったんだろう?と思う。
きよぽんが赤ちゃんの名前の候補として「真光(まこ)」を挙げてくれる。
そうか、名前を付けて届け出なきゃいけないんだ。
あれ、明日からどうやって会社に行けばいいんだろう。赤ちゃん連れて行ってもいいのかな。会社に言わなきゃ・・・
いや、その前に、家族に報告しなきゃ。
赤ちゃんが産まれるなんていう一大イベントをどうして誰にも伝えてなかったのかな?


きよぽんに面倒を任せて少し場を離れると、途端に赤ちゃんが泣き始めた。


翌朝。赤ちゃんとは別々に寝ていたみたいだ。
赤ちゃんの寝ている布団の方へ行く。赤ちゃんをすっぽり覆うように布団をかけている。
「こんなことしたら窒息して死んじゃうかも知れないじゃん、きよぽんってば・・・」と思い恐る恐る布団をめくりながら、その結末をどこか期待している自分がいる。
布団の下に毛布があり、その下には赤ちゃんがいた。
ふっくらとしたほっぺたに手を触れると、電話の受話器を持った時ぐらいの温度だった。
よく分からずにもう一度強く触ってみると、確かに冷たかった。そのまま私の手に押されて向こう側へごろんと体が転がった。目がガラス玉のようにくるりと見開かれていた。

私はきよぽんの寝ている部屋へ行き、大声で彼を起こす。
「きよぽん!きよぽん!赤ちゃんが死んじゃった」
彼は、私の普通じゃない様子にも特に驚く様子がなく、
「さえこ、あんまり悲しそうじゃないね」
と言った。
悲しみと恐怖と同時に、わずらわしい存在がなくなり安堵と開放感を感じていた私は、一瞬ぎくりとした。
「何言ってんの?そんなわけないよ」と言いながら、心の内を見透かされた事に焦りを感じていた。

赤ちゃんの所へ戻り、きよぽんに赤ちゃんを見せると
「この目、めちゃ怖いやん」
と、まるで人形でも相手にしているかのように言った。
生身の人間相手によくそんな事が言えるな・・・と思ったけれど、本当は私も、その子のことを家族や人間としてではなく、無生物として認識していた。その見開かれたくるくるの目を怖いと思った。