消化できない

Def Techの解散に心が痛んでいます。


初めてCMでMy Wayを聴いた時は別にそんなに好きじゃなくて…どんな人が歌ってるかも分からなかったし、歌詞が濃くて微妙だなぁと思ってました。
でもノブさんと付き合ってからだろうなぁ。レゲエとかラブ&ピースが大好きな彼が、Def Techかっこいい!と言って、確か、渋谷のタワーレコードでファーストアルバムを買ったんだった。
それからはもう、かなりのヘビロテで家や車で聴きまくったなぁ。
consolidation songとか、よく一緒に歌ったなぁ。


次に出たミニアルバム「Lokahi Lani」は、夏休みに大阪に遊びに来たノブさんが、「Def Techの新曲めちゃくちゃいいよ!」と言って、内環を走り通してようやく見つけたCDショップで私の分のCDを買ってくれて、和歌山までのドライブの道すがら、いっぱい聴いた。


そして最後のアルバムが「catch the wave」。
このアルバムは1年前、同居生活が始まってから、何度も車の中で聴いた。
サッカーの試合や食料品の買出しに行く途中…暗い夜道、助手席に座って景色を眺めながら聴いていた事を思い出します。





来週はノブさんの誕生日です。



昨日思い切って、ノブさんが3年間暮らした、私が3ヶ月暮らした、花小金井のアパートに行って来ました。

私の住民票がまだ小平市にあるので、今の住所に移す手続きをしなきゃいけないんだけど、その手続きをしに行く時には、ついでにアパートも見ておこうと思っていました。
だけど平日は仕事でなかなか市役所に行けないし、もうすぐノブさんの誕生日、そして亡くなってちょうど2ヶ月。


するとどういうタイミングか、Def Techが解散してしまって、もう今しか行ける時はない、と思って、思い切って行って来ました。




最初に、二人でアパートを探しに行った時お世話になった駅前の不動産屋さんへ行って、部屋が空いているか確認しました。
「1ヶ月くらい前から空いていますよ」
と言われ、なんとも言えない気分になって、お礼を言ってアパートへ向かいました。



10分ほど歩いてアパートに到着。
2階建て4室の古くてボロいアパートの201号室。
カンカン音のなる階段をのぼって、部屋の前に来ると、洗濯機やら車のタイヤやらサッカーのスパイクであふれ返ってたあの玄関前が、嘘のようにすっきりとして、何にも残っていませんでした。
ノブさんが自分で貼った「201」と書かれたシールだけが、ドアに残っていました。




郵便受けから中を覗いてみたら、からっぽの部屋が見えました。
二人で部屋探しに来た3年前の夏を思い出しました。


不動産屋さんに鍵をもらって、二人で見に来ました。
私は「駅から遠いしボロいし…」と文句をつけていたのに彼はすっかり気に入ってしまって、部屋中の寸法とコンセントの位置を測りながら(そういうところが本当に几帳面だった)「絶対ここに住むよ」と嬉しそうに笑ってたから、ノブさんがいいのなら、まぁいいかって思って、「でもウチがこっちに引っ越してくる時にはまた引っ越そうな、もっと駅近くて広いとこに」って言うと「いやいやいや引っ越さないよ。大丈夫大丈夫、さえこも住めるから。駅だって慣れれば近いって」って押し切られたんだよな。


何にもない部屋の窓から二人で外を眺めて、その数週間後にやって来る離れ離れの生活を考えていました。




彼との思い出を美化したりはするまいと思っているのに、彼とのそんなささやかな思い出を一生懸命思い出そうとしてしまう自分がいます。
Def Tech、ターンテーブル、サッカー、DIT、無印良品ヤフオクスノーボード、てんや、新宿、ステップワゴン、石川県、SOUL SCREAMの「蜂と蝶」、東大阪はなまるうどん、深北緑地、白浜、ドライブ、台所にいっぱいに並べた牛乳パック、駐車場にいたネコ、HYの「AM11:00」、、


忘れてしまうのが怖いんです。
自分からフッたくせに、あれだけ酷いことをしたのに、何でこんなに自分勝手なんだろうと思います。
思うけど…




懐かしく過去を思い返すのは、本当だったらもっともっと何年も後のはずでした。
もしも仮にその何年後かにお互いまだ東京にいて、何かのきっかけでわだかまりが消えてちゃんと話すことが出来れば、その時にはきちんと謝って、ありがとうを言おうと思っていました。
別れてから何ヶ月も、彼を許せずに酷い感情を抱き続けていた時期を経て、少しずつ、自分の中で彼という存在に対して新しい捉え直しが出来つつあったんです。



けど、その何年後かに訪れるかも知れなかったチャンスは今となってはもう永遠に失われてしまって、何十年経って私がおばあちゃんになったって、もう絶対に100%ノブさんに会えることはないんだ、と思うと、本当に怖いんです。

どれだけ音信不通で居場所も知らない人でも、いつか、どっかで会える時があるかも知れない、と心の片隅で思える事とは、決定的に違う。当たり前だけど…。


そんな事を思うと、何年か計画で消化しようとしていた私のノブさんへの想いや思い出や付き合ったことの意味を、私は何年もかけているわけにはいかなくなってしまって、
だってそんな事をしてたら、私自身がノブさんの事、忘れてしまうじゃないか!
私に出来ることはもう今は何もないんだ。
彼に幸せになってほしいとか、いつかありがとうを言おうとか、そんな事を考えて願っていても全く意味がないなんて、あまりにも酷すぎないか。



私が一生懸命ノブさんとの思い出を覚えていなくたって、いつかノブさんに可愛くて一途で優しい彼女が出来ればその娘とたくさん新しいいい思い出を作っていくらでも幸せになれるはずだって思っていたのに、
今では私は、自分の心の整理だって付いていないのに、ノブさんの事を少しでも多く覚えていてあげないといけない、ノブさんが遺したものを忘れてはいけないと変に必死になってしまっています。


だから、Def Techが解散しただけの事なのに、それだけでひとつノブさんが生きていた証拠が消されてしまうようで、心が苦しいです。





何を言いたいのかやっぱり分かりません。



アパートの部屋の前で1時間くらい、何もせず立ちながら、そんな事を考えていました。